こぼれ落ちるため息は贅沢だ

日々いろいろのこと。彼さんとのこと。わたしのこと。

ときめくかたづけ

人生がときめく片づけの魔法

片付けコンサルタントのこんまりさんの考え方はとてもシンプルで好きで、

引越し先にほとんどものを持っていかないと決めた今まさに実践しなきゃいけないんだけど、

本だけはなかなか選別できないわたし。

本はわたしを豊かにしてきた礎で、それをおろそかにはできない。

本棚は一番最後に手をつけよう。



年末年始の帰省のため、彼さんは実家に帰っていった。

わたしは1月末に解約する自分の部屋を片付けている。

毎日会っていて、一緒に眠らないことなんてほとんどないので、

こんなに長く会えないのは付き合ってはじめて。

同棲先の彼の部屋を後から出るのが嫌で急いで準備していたら、

別にいない間もこの部屋で好きにしてていいんだよ、これから先実際そうなるんだし、と言われ、

後から出ると寂しくなると言ったら、これから先もそういうことが増えるんだから、慣れておかないと、とも。


これから先、を長いこととしてとらえてくれるのが嬉しい。



年末。

いつもはしないけど、今年は来年の目標をちゃんと立てよう。


まよなかごはん

こまったさんのハンバーグ (おはなしりょうりきょうしつ (3))

うちはわたしも彼さんも帰りが遅いので、

ごはんは夜遅くになることがおおい。


なるべくあっさりめを心がけると

自然に鍋物や和食をよく作っていたのだけど

(かわりにわたしが遅いと彼さんはパスタなんかの一品料理を作ってくれたりしているのだけれど)

珍しくハンバーグを食べたいと言われたので洋食づくしに。しかもごはんも食べたいと。


さすがに夜遅いのでせめてごはんの量を減らせるように、

ミネストローネを作り、

ハンバーグの下ごしらえをして、

彩りに小松菜のソテーとにんじんのグラッセ

ごはんも炊いてちょうど買い物から1時間ぐらい。

夕ごはんの支度を副菜もちゃんと作って1時間以内に収めたい、というのが、同棲してからの目標。

さすがに、ハンバーグはほんとは寝かせたりしたかったので厳しかったけれど。


彼さんは夜遅くに帰ってきたにもかかわらず、

お腹がすごい空いてるといって、

ハンバーグで、ごはんを二杯。

ミネストローネもおかわり。

あーあ、と思ったけれど、

結局おいしく食べてもらえるのがいちばんだものな。


洗い物はしてもらって、お互いありがとうといって。

なんだかほっこりした夜でした。


ちっちゃく揺れる

今年ももう終わりと思いながら、書き始める小説について思い悩んでいる。

書きたくて書いていたはずのものが義務になるのはかなしいことなのに、

締め切りが近づくたびに書かなくてはという意識だけ強くなる。

書きたいものがないのに、書いても仕方ないのに。

 

 

彼さんは両親に挨拶してくれて、はれて正式に?同棲をすることになる。

クリスマスは祝日に一緒にごはんを作って過ごした。

プレゼントもちゃんと交換して。

恋人とこんなにちゃんとクリスマスをしたのは人生で初めてだったかもしれない。

というようなことを伝えたら、なんだか彼さんはうれしかった模様。

もらったピアスはちっちゃく揺れて、かわいい。

 

 

二十代最後、というこの時間はおんなのひとを妙に焦らせるのだよな、としみじみ。

毎日のなにが変わる訳でもない、といいたいところだけれど、

この一年、彼さんとつきあったり、家を変えたりとめまぐるしい。

そして、来年は転職をしたいな、と思いながら怖じ気づいていたりも。

日常を変えるのは怖いけれど、変えられるのもまたわたしだけだ。

自分に何ができるか棚卸しして、なにが大切かちゃんと考えて決めよう。

 

本棚を眺めているのが好き

発光地帯 (中公文庫)

小説をまた書く習慣ができたのに本を読んでいなくて、彼さんとアニメや映画は見たりするのだけれど、これではいけないなと思っている。
アウトプットばかりになると不安定で弱い文章しか書けなくなる。
苦手な本も読もうと思って読んだ、川上未映子さんのエッセイが楽しかった。昔、芥川賞候補作だった作品は全く読めなかったのに、言葉遣いのとりこになってしまいそう。
 
彼さんの本棚にも、私が読んだことない本はたくさん並んでいる。
彼さんの尊敬すべきところは、世界の名作文学を幅広くちゃんと読んでいるところだ。それも、文芸と名のつく勉強をしていたわたしよりずっと。日常の何気ない会話の中で、それはふいにでてきて、わたしをどきりとさせる。例え話や思い出話や、テレビの中で出てきた一言に、ふいに差し込まれるその物語の印象を、本当は共有していたかったと思う。
名作文学は借りてばかり読んでいたのか、幾つかの引越しでの移り変わりか、彼さんの本棚にドストエフスキーやらトルストイやら太宰やらはもういなくて、いま残されているのは、新しく買った本たちと、気に入りの本たちだけ。
彼さんの気に入りの本棚にはいくつかの名作があって、純文学のベストセラーがあって、エンタメ小説もちらほらと。漫画もたくさん。
 
本棚を眺めているのが好き。
 
彼さんを形づくってきたものが見えるから。
 
 

からっぽの水槽

チルチルさんはなくなってしまった。

 

深夜、帰宅した彼さんとごはんを食べてから、近くの神社に埋めにいった。

ちいさなチルチルさんは、水槽の外で見るともっと小さくて、綺麗な朱色をしていた。

 

からっぽの水槽を整理しなくちゃいけないのに、まだできていない。

 

少しだけ泣いたのは、たぶん後悔と懺悔だ。

 

覚悟するということ

星の王子さま―オリジナル版

チルチルさんは、もう体力がなさそうで、水槽の隅っこでかろうじて息をしている。

もっと飼い慣れた人ならなんとかできたのかもしれないけど、わたしにはなんにもできない。
 
彼さんも、覚悟しておいたほうがいいと言った。
 
朝ひとりで水槽を覗くのが、ほんとはちょっと怖かった。
 
 

 

 

チルチルさんとミチルさん

青い鳥 (新潮文庫 メ-3-1)

朝、ごみを捨てて、会社にゆく彼さんを見届けて

疲れから、布団に戻って眠ってしまっていた。

先週から朝の習慣になっていた金魚のエサやりは、もう少し後でいいかと思って、

午前中の歯医者の予定もキャンセルして。

 

起きたら、二匹のうちのおおきなほう、

ミチルさんが動かなくなっていた。

 

ああ、やってしまったと思ったし、

かなしい、とも思ったし、

昨日まで、なんでもないように見えていたのに。

ただ久しぶりの、なくすという感覚に混乱してもいた。

ミチルさんを放っておいたら、チルチルさんも弱ってしまう。

そう思って、ひとりでミチルさんを引き上げて、

ティッシュに優しくくるんで。

 

お祭りで金魚すくいをしようと言ったのは彼さんだった。

その日すくった一匹がチルチルさんで、

おまけでもう一匹もらったのがミチルさんだった。

ちゃんと飼えるよね、と話をして、その日のうちに近所で一番大きなペットショップで、お店の人に相談して水槽と飼育セットを買った。

小さなころにはできなかった最善のことをしてあげたい、

そう思っていたはずだったのに。

 

午前で仕事終わりの彼さんに連絡をして、

チルチルさんのために水槽の水換えをしてもらい、

二人で川の近くの公園にミチルさんを埋めに行った。

木の棒で穴を掘り、ミチルさんを埋めて、手を合わせて。

生きものと生きるということはそういうことだった。

部屋で泳いでいるはずのチルチルさんを思って、不安になる。

 

水槽という閉鎖的な空間は、とても不安定だ。

水温も水質も数値で見ることはできても感じることはできない。

 

チルチルさんはまだ生きている。

不安定な水槽をどうにかしてあげたい。