チルチルさんとミチルさん
朝、ごみを捨てて、会社にゆく彼さんを見届けて
疲れから、布団に戻って眠ってしまっていた。
先週から朝の習慣になっていた金魚のエサやりは、もう少し後でいいかと思って、
午前中の歯医者の予定もキャンセルして。
起きたら、二匹のうちのおおきなほう、
ミチルさんが動かなくなっていた。
ああ、やってしまったと思ったし、
かなしい、とも思ったし、
昨日まで、なんでもないように見えていたのに。
ただ久しぶりの、なくすという感覚に混乱してもいた。
ミチルさんを放っておいたら、チルチルさんも弱ってしまう。
そう思って、ひとりでミチルさんを引き上げて、
ティッシュに優しくくるんで。
お祭りで金魚すくいをしようと言ったのは彼さんだった。
その日すくった一匹がチルチルさんで、
おまけでもう一匹もらったのがミチルさんだった。
ちゃんと飼えるよね、と話をして、その日のうちに近所で一番大きなペットショップで、お店の人に相談して水槽と飼育セットを買った。
小さなころにはできなかった最善のことをしてあげたい、
そう思っていたはずだったのに。
午前で仕事終わりの彼さんに連絡をして、
チルチルさんのために水槽の水換えをしてもらい、
二人で川の近くの公園にミチルさんを埋めに行った。
木の棒で穴を掘り、ミチルさんを埋めて、手を合わせて。
生きものと生きるということはそういうことだった。
部屋で泳いでいるはずのチルチルさんを思って、不安になる。
水槽という閉鎖的な空間は、とても不安定だ。
水温も水質も数値で見ることはできても感じることはできない。
チルチルさんはまだ生きている。
不安定な水槽をどうにかしてあげたい。